2026年7月、KPMGコンサルティングは佐渡パートナーを新たな代表取締役の1人に迎え、新体制をスタートさせました。
掲げるのは「Trust & Growth(トラストアンドグロース)」――信頼を起点に、会社も個人も、そしてクライアントもともに成長していく。そんな未来像です。約2,000名規模へと成長したいま、会社は「大きなファームになるための”つなぎのステージ”」に立っていると新代表・佐渡は語ります。AIが多くの仕事を担う時代に、コンサルタントに求められる価値とは何なのか。どんな想いで経営を担い、これからどんな会社を目指すのか。そして、これから仲間になる人に何を期待するのか。新代表・佐渡に飾らない率直な言葉で語ってもらいました。
―― 7月から代表に就任されましたが、いまの率直なお気持ちを聞かせてください。
「KPMGコンサルティング(以下KC)を、いい意味で“非連続”に進化させたい」という想いが一番です。
これまでもKCは着実に成長してきましたが、今の延長線でそのまま伸ばしていくのではなく、少し角度を変えた成長を図っていきたいと考えています。 もちろん、変えるというのは相当な覚悟がいることです。それはもう痛いほど感じています。それでも前を向いているのは、いまがまさに“変わるべき絶好のタイミング”だと確信しているからです。
―― 「連続的な成長」ではなく、あえて「非連続」という言葉を選ばれたのはなぜですか。
KPMGコンサルティングは、まだ「強いコンサルティングファームだ」と胸を張れる段階には至っていないと思っています。
業界内において圧倒的な“強さ”を実現するためには、「誇れるサービス力・サービス品質」と「適時適切にクライアントにその価値を提供する市場対峙力」の両輪が無駄なく、機動的に連携して動くメカニズムの実装が必須です。その圧倒的なレベルを見据えたときに、今のKCには成長余地が多分に内在していると思っています。
「このつなぎのステージは、サービス品質もケイパビリティも、徹底的に強化しなければいけない時期だと思っている」
これまでの12年間の成長ステージにおいては、比較的「個別サービス・個別部門強化」をコンセプトにボトムアップ型で成長させていくモデルで進んで来ました。そして今、約2,000名という今の規模は、圧倒的に強いファームになるための、“つなぎのステージ”だと捉えています。個別発展から組織的発展へ、ただし、つなぎのステージだからこそコンサルタントとしてのコアを徹底的に磨きあげていく事にこだわった進化アプローチを採りたいと考えています。比較的自由に育ってきた一人ひとりの力を、組織力としてマーケットに誇れる“力”に昇華させていく、その為には、これまでのやり方をただ延長するのではなく、組織再編にまで踏み込んで、新たな発展モデルで加速させて行きたいと考えました。
―― 今回、組織再編を行いましたが、その根底にある考えを教えてください。
先にも述べた通り、再編の根源にあるのは「企業としての成長ステージ」に合った形にする、ということです。
現状の2,000名規模はまだまだ発展の道半ばにあるわけですが、その発展シナリオを思い描いた時に、今の規模感、つまり今の成長ステージにおいて大事にするべき事は何なのか、が最初の大論点でした。
その際、真っ先に頭に浮かんだのは「コンサルタントとは何者なのか?」という原理原点であり、その“真の価値”の強化を怠ったままの発展では、いずれ規模の大きさに耐えきれずに品質問題やコモデイティ化の波に飲み込まれるのではと考えました。業界やクライアントの事をとことん深く理解し、抱えている課題の芯を外さず、どこよりも強い覚悟と高い課題解決力で未来を指し示して行く、それこそがコンサルタントの“真の価値”であり、それが今後KCが5年、10年と成長していく中でも絶対に失ってはいけないコアバリューであり、その実装こそが今のステージにおいては大切なんだ、と。そう思う一方で、業界全体の流れの中でどこか我々の中にも組織分業的、売上至上主義的な動きが少なからず生まれつつあった事への危機感もありました。誤解しないで頂きたいのは、会社である以上、成長は追及していきます。業界の中で“圧倒的な存在”となれるような外形的な成長も当然経営としては求めていきます。ポイントはどのように成長するか、永続的に強く成長出来るモデルになっているか、なのです。
昨今のプロジェクトケースにおいては、業界変化やクライアントイシューの多様化、先進テクノロジーや目まぐるしく変わる規制動向など、あらゆる知見を編み合わせながら対峙しなければ付加価値を提供できないような相談も増えて来ています。だからこそ競合他社に負けない付加価値を提供していく為には、業界知見も顧客理解も、そしてサービス力も、もっと惹きつけあいながら密に連携して市場と対峙していく構図が必要だと思ったのです。故に、セクターとサービスラインという形で組織的に分離していたモデルを単一組織に集約するという「シングルライン化」を企図しました。
そして、そのシングルライン化を「業界軸」とするのか「サービス軸」とするのか、を社内でも徹底的に議論を重ねたのですが、先述した通り、“今の成長ステージ”においてはやはりサービスラインで束ね、そのサービス品質・コンサルケイパビリティ力を圧倒的に高めていく事こそ次なる成長ステージへの“つなぎ”としても良いと結論づけました。同時に、アドバイザリホールディングスが立ち上がり、そこにセクター機能が集約・強化されるという動きも生じた為、一層、KCとしてはサービスライン軸でのユニット強化に舵を切りました。もちろん、サービス業である以上、どこまで行ってもアカウントファーストという行動様式は変わらない前提で。
もうひとつ大切にしたのは、組織も人ももっとマーケットに向き合える構造にしたい、という事です。組織規模が大きくなり、更には分業モデルにありがちな、「何のためにやっているのか分からない」社内的な調整ごとが増えてきている事にも課題感をもっていました。組織管理や内部調整といった内向きな時間をできるだけ減らすべく、組織は最大限シンプルな形、つまり大くくりにしました。セクターコンサルティングもサービスコンサルティングも、一つの組織の中で対マーケット、対顧客に向かって無駄なく密に連携して総合的な価値を提供していく、よりひとつに結合させていく――そんな流れをつくりたかったんです。分かれて縦割りになるのではなく、つながって総合力を発揮できる組織へ。それが今回の再編に込めた狙いです。
―― 新体制では「Trust & Growth」を掲げています。この言葉に込めた想いを教えてください。
「マーケットに求められる人とは、つまり信頼される人。コンサルティングは、最後は”人”だとよく言われる。その信頼こそ、骨太な成長の原点になる」
先ほど、今のステージにおいては高いサービス力・品質の強化が大事である、と述べましたが、この品質というものにはコンサルタントとしての「信頼」という要素が多分に含まれると思っています。ファームとしての信頼もそうですが、この人なら任せられると思っていただける“人としての信頼”がもっと大事だと思うのです。これは、どれだけ時代が変わろうとも、コンサルタントの仕事の質が変容しようとも普遍的な要素だと思います。ましてやAIが多くの作業価値を代替していく流れにあっては「信頼できる」というのは決定的な差別化要素になると思っています。そしてKPMGグループには、“信頼あってこそのKPMG”というDNAや企業風土がグローバルレベルで連綿と受け継がれています。これほど誇れる差別化要素はありません。故に、今一度我々KPMGが備えている“信頼出来るコンサルタント”というポジションを明示化し、あらゆる企業活動の根本に置いた上で成長アクセルを踏んでいく事を宣言したかったのです。
Trustの結果として実現できる「Growth(成長)」も、決して会社の売上拡大だけを指しているわけではありません。信頼を起点に、会社も個人もクライアントも、その先にある社会、全てのステークホルダーがともに成長していく、それがこの言葉に込めた思いです。
――では、その「Trust & Growth」を、これから具体的にどう進めていくのでしょうか。
先ほどお話しした組織の見直しは、その第一歩です。その再編の中で新たに定義した各ユニットごとの「生産性」を経営の重要指標としてセットしています。これは、何も生産性や収益性を“徹底管理していきたい”という意図ではなく、「コンサルタントとしての付加価値」を磨きあげていく事で少ない人工でより高い対価をいただけるような構造に変えて行きたい、という決意を込めたんです。これまでのビジネスモデルにおいて当然とされていた「要員数」×「稼働」レバーだけに過度に依存したモデルから脱却して、付加価値にこだわる経営モデルに舵を切りました。
その実現に向けて長期・短期の両方の目線を持って、各ユニットがAI等も駆使しながらより市場ニーズに応える付加価値高いサービスやソリューションの開発を加速し、市場から求められる強い人材を育て、そしてクライアントから高い信頼を獲得してより高度かつチャレンジングな依頼を途絶える事なく頂戴する、そういう努力をどんどん促していく構図に変えたつもりです。信頼される「人」や「サービス」・「ブランド」という基盤を磨きあげ、人依存でない生産性向上を実現していく事に拘った経営モデルに変えた、というのがまずは1点目です。
2点目は、リーダーシップ改革です。シンプルな組織にしたことで、パートナーの多くが組織管理に割いていた時間から解放され、クライアントの経営に近い、上流の仕事、大胆な企業再編などの案件に従事できる時間を増やして行きます。結果的に、社員が挑めるプロジェクトのレイヤーもまた難易度も上がっていくはずですが、それこそ“強いコンサルタント”の育成においても最大の効果があると考えています。
3点目は、AIとの協働です。KPMGはグローバルでAIに大きく投資をしていて、私たちもそれと連携しながら、コンサルティングの現場にどんどん実装していきます。数字は申し上げませんが、生産性の大幅な向上を徹底して進めていきます。単に作業効率化を推し進めるだけなく、AIを味方につけて我々のサービス品質の価値そのものも高めていきたい。
そして4点目として、単発なご支援で終わらせず、クライアントの実ビジネスにおいて改革効果が発現されるまで伴走し続けられるような「マネージドモデル」のサービス提供にも力を入れて行きます。AIのアプリケーションとも組み合わせながら、腰を据えて向き合えるサービスを育てていきたいと考えています。
そして、最後5点目としては言わずもがな、人材への投資です。「コンサルティングのサービスや売り方を教える研修」ではなく、「AI時代だからこそ、信頼されるコンサルタントであるための価値とは何か」、その問いに応えられるような人材育成プログラムや環境をつくっていきます。やはり“個が強い”、“個が信頼される”ファームでありたいですからね。
―― AIが進化する時代に、コンサルタントの価値はどう変わっていくとお考えですか。
私はよく、人には「内なる力」と「外ににじみ出る力」があると話しています。
専門性という”内なる力”は、テーマが明確なぶん、実はAIに置き換えられやすいものです。財務でも戦略でも、領域が定まっているものほど、AIは得意ですよね。
一方で、人と人の境界からにじみ出る力――さまざまな専門性や経験が相互に作用して生まれる「総合力」こそ、AIには代替しにくい。人と人が触れ合って新しいものが生まれる境界領域にこそ、コンサルタントの本質的な価値があると思っています。
「AIは情報は出せるけれど、人を“動かす”力はない。最後は人。動かしたい、変えたいというマインドが根本にある人が、いいコンサルタントになる」
たとえば自動車産業のコンサルティングひとつ取っても、ロボタクシーや地方交通、法規制対応やスタートアップとの連携まで、官民学のあらゆるプレイヤーが絡んできます。それらをつなぎ合わせ、折衝し、前に進めていくのは、まさに人間の交渉力です。多様なテーマに触れて幅を広げた個人同士が結びついたとき、はじめて生まれる価値がある。だからこそ、私たちは“個の力”を伸ばすことに徹底的にこだわりたいのです。
―― かつてのコンサルタントと、現在とで、変わってきたと感じることはありますか。
正直にお話しすると、本当にマーケットを動かしたい、クライアントを大きく変えてみせたい――そんな熱量を持った人は、20年前と比べると少なくなった気がしています。
私個人の体感ですが、1990年代後半から2000年代にかけては、そういう情熱を持った人が多かったです。その後、オペレーションを実装する仕事が一気に増え、専門領域を細かく分けて繰り返しアウトプットするモデルが広がっていった。でも、まさにそこがAIに置き換わっていく部分なんです。
だからこそ、その熱をもう一度取り戻したい。「KPMGは灯台のような存在でありたい」というグローバルで謳われているキャッチコピーがあるのですが、不確実な世の中、そこまで将来の道筋をクリアに予測する事はさすがに難しいとしても進むべき”半歩先を照らす”存在でありたい、というメッセージなのです。世の中の変化に対して、人間ならではの感性や協調性などを駆使して、少し先を照らしながらクライアントを導いていく――それが私たちの使命だと思っています。原点に立ち返り、「強いコンサルタントでありたい」、「信頼されるコンサルタントでありたい」という想いを、あらためて掲げていきたいですね。
―― これからの社員には、どんなことを期待しますか。
1つの専門性だけに閉じこもらないでほしい、ということに尽きると思います。
「”自分プラスアルファ”をもっと総合的に学んでほしい。いろんなテーマ、いろんな人と折衝することもやってほしい」
特に経験してほしいのは、経営に近い視座に触れることです。昔から「コンサルタントは経営者になる為の登竜門」と言われて来ましたが、経営に近いところに身を置いて学べることは本当に大きい。経営とは、無数の変数のバランスをどのように編み合わせて着地させていくか、が問われ続ける”総合格闘技”のようなものです。経営という視座を持つ事で、自分の専門性だけでは決して身につかない力や物事の捉え方に触れられます。自分の専門性だけで価値を提供し続けていく、というのはAI進化の流れを鑑みても難しくなってくるのは間違いないでしょう。変数が増え、判断のスピードも増していくこれからの時代に、自分プラスアルファの力の磨きあげを怠らずに、経営者マインドで日々のプロジェクトに従事する、その積み重ねの先で未来の総合格闘技で戦える人材をKC社内では育て、社会に輩出していけたら良いですね。AI時代だからこそ企業や社会を“動かせる”リーダーを育てたいですね。
―― 最後に、これから仲間になる人へのメッセージをお願いします。
「“コンサルティングファームに入りたい人”よりも“コンサルタントになりたい人”」
原点回帰ではないですが、もう一度“コンサルタント”という職業の本質に立ち戻って考えて欲しいと思っています。やはり、コンサルタントは動かない世の中や、困っている人に対して、「自身の力を持って、何かを動かしたい・変えたい」と思える人だと思うんです。コンサルティングファームに入ること自体は、あくまでそのための手段であり機会の獲得でしかありません。そこでコンサルタントとして何がしたいのか、何を動かしたいのか、その意識やマインドが高い人が一人でも多く集まっていただきたいと思っています。
学生のみなさんには、ぜひ「未来志向」を持ってほしいです。日々の生活のなかで、自分の探究心・好奇心・創造心と対話してみてください。テーマは何でもいいです。
何かを変えたい、創り出したい、提言したい、――その人間らしい原動力こそが、これからのコンサルタントの価値として重宝されていく事は間違いないので。
信頼を起点に、非連続の成長へ。一人ひとりの力を磨き、AIには代えられない「人を動かす力」を育てる。まさにいま、KPMGコンサルティングは大きく変わろうとしています。
「世の中を動かしたい」――そんな想いを持つ方を、KPMGコンサルティングは待っています。