
【金融】
オーナーシップをもってクライアントに徹底的に寄り添い、巨大組織の変革に向き合う
KPMGコンサルティングは、官公庁や自治体など公共セクターの事業支援にも携わっています。本プロジェクトはそのなかで、AIを活用した行政事業の類似性構造分析に関する調査研究プロジェクトです。
プロジェクトを担ったのは、セクター部門で公的機関を支援する「Government」と、先端技術を活用し社会課題を解決することを掲げる「Advanced Innovative Technology(AIT)」のメンバーで構成されたプロジェクトチームでした。明確な解のない課題に対し、どのように両部隊のシナジーと総合力を最大化して臨んだかについて、メンバーに語ってもらいました。
KPMGコンサルティングは、官公庁や自治体など公共セクターの事業支援にも携わっています。本プロジェクトはそのなかで、AIを活用した行政事業の類似性構造分析に関する調査研究プロジェクトです。
プロジェクトを担ったのは、セクター部門で公的機関を支援する「Government」と、先端技術を活用し社会課題を解決することを掲げる「Advanced Innovative Technology(AIT)」のメンバーで構成されたプロジェクトチームでした。明確な解のない課題に対し、どのように両部隊のシナジーと総合力を最大化して臨んだかについて、メンバーに語ってもらいました。
日本の各省庁は、たとえば少子化対策やスマートシティといった国の政策に基づいて、それぞれに事業を展開しています。そうした事業は数千にも及び、各事業の効果が本当に出ているか、省庁間で重複している事業はないかなどを評価するには、膨大な労力がかかります。
そこで、各省庁が実施する事業の複雑な関係性を把握し、AIを使って類似性の分析や構造化に向けた分析を効率的・網羅的に行えるか検証することが、今回のプロジェクトの概要でした。最終的には、本プロジェクトを通じて、各事業の評価の改善や政策推進につなげることを目的にしています。
少し言い換えれば、さまざまな基準で類似性や関係性を明らかにする「類似性構造分析」によって、事業の重複や、特定の政策の中で手が届いていないエアポケット的なゾーンを、効率的に探す方法を調査研究する、そんなミッションです。
クライアントが公的機関ということで、入札を経て受注となったのですが、後にクライアントにKPMGコンサルティングを選んでいただいた理由をうかがったところ、公共セクターに特化した部隊と、最先端デジタル領域を専門とする部隊でチームを組める点をポイントに挙げていただきました。あわせて評価いただいたのが、特定のシステムやソリューションに依存せず、フラットな状態でクライアントの最終的な目的に応じた最適解を見出だし進めていく当社の支援スタイルでした。
そしてもう1つ、今回のプロジェクトは明確なゴールがあるわけではない「調査研究」で、ひたすらトライアンドエラーを繰り返すものなので、当社の特徴であるクライアントにしっかり寄り添いながら伴走するスタイルも評価につながったのではと思っています。
私自身は、もともと大手SIerで20年ほど、公共分野の大規模なシステム開発などに携わってきました。2年ほど前にKPMGコンサルティングに転職し、今回のプロジェクトにはクライアントの行政機関が新しい技術で世の中を動かそうとしているところに意義と面白さを感じ、手を挙げて参画しました。
私は新卒で他コンサルティングファームに入社し、以来中央省庁を中心に調査研究業務や実証支援業務に従事してきました。また、KPMGコンサルティングに入社後は、政府が力を入れているEBPM(Evidence-based Policy Making:データやエビデンスに基づいた政策立案)にかかわる案件の獲得にも取り組んでいます。中央省庁を中心とした調査研究業務や実証支援業務のプロジェクトマネジメント経験を有している点、また本プロジェクトがEBPMに寄与するものであるという点からアサインされました。
私はこれまで、製造業周りの根深い社会課題に対し、自然言語処理を用いて解決するための技術検証やソリューション開発を主に担当してきており、その中で、さまざまなAI技術の知見を蓄積してきました。今回は、複雑なアドリブが求められる側面もあり、そうした引き出しを通してプロジェクトに貢献することが期待されていました。
私は当社のAITチームにおいて、自然言語処理を活用して文章の類似性や構造性を分析する業務に携わり、事業会社のもとに眠るデータから何か新たな示唆が得られないか検証を繰り返すといった業務の経験があります。今回も、そうした経験・知見を踏まえてアサインされました。
ここで、類似性構造分析がどう政策形成能力の向上につながるか、簡単に説明します。重複などの可能性があって精査が必要な事業の数は、テーマによっては数百にも及ぶので、AIによる分析精度を高めて人が最終的に確認する要素をいかに減らすかが重要なカギになります。
関連する事業をリストアップし、重複やエアポケットなどを特定するにあたっては、事業の構造を把握したうえで、ここがこんなふうに類似しているといった根拠を明示することが求められます。そうした分析の実現性を検証するのが、今回のプロジェクトでした。
クライアントが抱える多岐にわたる課題に対して、解決の方向性を見極めるには、各業界に特化した深い知見が必要で、それを持つのがセクター部門です。S. Fさんと私はその中のGovernmentセクターに所属しており、クライアントである公的機関との信頼関係の構築から、プロジェクトの獲得、進捗管理や課題管理、コンサルティングサービスの付加価値向上等、プロジェクトのプロデューサー的な役割を担っています。
先述のとおり、本プロジェクトは、事業間の複雑な関係性を把握するために、AIがどういった役割を果たすことができるのかを検証するものであったことから、AIの専門知見を持つAITにプロジェクトの提案から協力してもらい、その結果、案件を獲得することができました。コンサルティングサービスの提供にあたっては、プロジェクト全体のマネジメント、たとえば進捗管理や課題管理、クライアント窓口対応等はGovernmentセクターが担当していますが、AIの専門性を要する業務、たとえば分析環境構築、分析、評価、考察、それらの結果報告等については、AITが担当しています。
私たちAIT側はクライアントの求めるものへの理解が足りないと、アウトプットが浅くなったり、違う方向性に進んでしまったりしかねません。その業界特有の商習慣や提案資料の作成方法などのフォローを、Government側には大変尽力してもらいました。反対に私たちも、その方向性では技術的に難しいけれど、代わりにこういう形ならできますよといった提案を行いました。そうして相互の強みをもって補完し合うことを意識して、チーム内のコミュニケーションをうまく回していきました。
毎朝、両チームでミーティングをするのですが、特に用事がなければ5分で終わる一方、何か気になる点があったりすると30分でも1時間でも話し合います。
私たちはAIのスペシャリストではないので、AITからいろいろ吸収しようと、AITのミーティングに相乗りしている形です。
2人にはとても積極的な姿勢で参加してもらい、こちらとしてもさまざまなキャッチアップになり助かっています。やはり技術面ばかりに目を向けていると、クライアントを置いてきぼりにしかねないので、クライアントの業界知見を踏まえた「ここはわかりにくい」といった率直な意見をもらえるのがありがたいです。
私たちがうまくコラボレーションできると、クライアントに「資料がすごくわかりやすいですね」と言っていただけ、フィードバックに如実に反映されるところが面白いです。反対に、両チームの意思疎通が不十分だと、一生懸命説明してもクライアントから「これはどういうことですか?」と質問が繰り返し生まれ、理解いただくのに時間がかかってしまうこともあります。
特に今回のプロジェクトは、初めに明確なゴールがなく、向かう方向性そのものを考えていく難しさがありました。それを打開するには、検証をアジャイルに行って手数を増やすことが大切だと考え、私たちAITチームは毎週のクライアントとの打合せに必ず検証結果を1つ提出することにしました。とはいえ、1週間で検証結果を出し、課題を抽出し、資料にまとめるというのはなかなかタイトでして…。
そんな中で大きな助けになったのが、チーム力です。Government側から意見を聞いたり、資料を見せてレビューしてもらったりといったことを積極的に採り入れながら、アウトプットを最大化していきました。そうしてなんとか検証をアジャイルに回し続けることで、クライアントの期待値を毎回超えられたのではないかと思っています。
当プロジェクトは数千に及ぶ行政事業が対象で、AIをチューニングしすぎると汎用性が下がるため、それは避けてほしいとクライアントから要望がありました。一方で、AIの精度を高めるには、ある程度のチューニングも必要で、その線引きをどうするかが難しかったです。それについては、クライアントと密にコミュニケーションを図ることで、打開していきました。
汎用性を確保しながら、細かなニーズを満たすには、やはりクライアントからしっかりヒアリングすることが何よりです。クライアントにもチームに加わっていただき、積極的に意見を引き出すようなイメージです。まだ世の中に答えがない事案だからこそ、関係者を巻き込みながら、見えないものを一緒に可視化していく必要がありました。
私も同じような難しさを感じていました。事業が数多あり、テーマもまちまちなので、特定の領域に特化したチューニングはできない。でも、その中でなんとか広く共通する項目をあぶり出し、フレームワーク化したい。それを実現するために採ったのが、分析結果を丹念に調べ、この類の文章が捕まえられていない、この類は捕まえられているといった定性的傾向をつかむことです。そこに関しては、とくにT. Mさんが価値を発揮してくれ、とても感謝しています。
数字はわかりやすい反面、それだけでは精度が上がらないので、定性的な要素を捉えることがすごく大切になります。さすがに条件にヒットしたすべてを見ることは難しいですが、結局は50件、100件と地道に見る泥臭い作業が、壁を超える重要なカギになりました。
プロジェクトの立ち上げ期や、分析環境を構築する際に、難題にぶつかって1ヵ月くらいみんなでどうしようと途方に暮れたこともありましたが、外部のパートナー企業にも助けてもらいながらなんとか打開しました。このように、いろいろなパートナーと手を取り合って進めるのが今の時代のやり方でもあるので、普段から社外にも仲間を作っておくことが大切だなと感じています。
また、KPMGコンサルティングの社員には、人の良さを感じます。多くの人がそれぞれに突出した分野を持っているので尊敬できますし、自分と異なる意見であっても真摯に耳を傾け、1つのゴールに向かって手を取り合ってやっていこうというマインドの人が集まっていると感じます。
すごく同感です。
このプロジェクトはまだ完了していませんが、今回の成果の1つとしては、事業間の複雑な関係性の把握に対して、生成AIの活用可能性が一定程度見込めたことが挙げられます。
私としては、検証をアジャイルに行っていけたことが、やはり大きかったです。試したいことをさまざまに検証できましたし、今回のプロジェクトでは採用されなくても、今後壁にぶつかった際にはそこから解決策の種を引っ張り出せるかもといった知見も、いろいろと得られました。
やはりGovernmentをはじめとするセクター部門と、AITをはじめとするサービスライン部門の組織を越えたコラボレーションが積極的に行われている点が、KPMGコンサルティングの大きな強みと考えています。そこのコラボレーションがうまくいっているからこそ、プロジェクトが円滑に回っているのではないでしょうか。
KPMGコンサルティングには多様性を尊重し、お互いをリスペクトする文化があります。組織の壁は低く、多様なメンバーがさまざまな観点から自由に意見を出し議論できる。そこが、コラボレーションがうまくいっているカギの1つなのかなと考えています。私も何かに困ったら、すぐにAITをはじめ他部門、他メンバーに気軽に相談しています。
私たちとしても、積極的にコラボレーションしたいと思っているので、そうやって気軽に声をかけてもらえるのは嬉しいです。
プロジェクトを獲得した部署が優位になるといった空気もなく、セクター側の2人とも壁を設けずにフラットにつきあっています。何より、クライアントのために一緒により良い解を追求していこうという意思を感じ、こちらも自由に動くことができています。
組織の垣根なくコミュニケーションができ、職位関係なく議論も活発で、困ったときはそれを口に出せる。私はKPMGコンサルティングのそうしたところが特に好きで、おかげで楽しみながら仕事ができていると改めて感じます。
自分の領域を広げながら続けられるところも、面白さの1つです。あなたはこのクライアント、このセクションと上から決めつけられることがないので、自分の興味のある方向性に進めます。プロジェクトの承認会議でも、リスクが大きすぎるなどと否定から入るのではなく、どうやったら実現できるかを会社として一緒に考えてくれるのがありがたいです。
自分に意欲さえあれば、どこまでも引っ張り上げてもらえる環境ですよね。成長する場として、理想的だと感じます。
目先の利益に飛びつくのではなく、中長期的にクライアントが発展していくことを大事にするカルチャーも、KPMGコンサルティングならではだと。実際に承認会議では、そうした観点からプロジェクトの意義を説明するほうが、承認されやすかったりします。
仕事内容としては、国民に広く使われるサービスや制度など、公共セクターの案件を通して世の中を変える仕組みを作れることが面白いです。自分が深く関わった事業が、新聞に大きく載ったりするのは、やはりやりがいを感じますね。
今後は引き続き、社会課題をはじめとする大きなテーマに対し、先端技術で解決を図る支援をしたいです。また、AITでは今エマージングテック(将来的に実用化が期待される先端技術)の知見を蓄えていて、私はブレインテック(脳科学と先端テクノロジーをかけ合わせたもの)の専門家としての活動も精力的に行っていきたいです。
私は、先端技術をしっかりビジネスにつなげていいサイクルを回すことで、技術の恩恵を社会に還元するといった部分に力を入れていきたいです。先端技術を社会の課題解決に結びつけられる人材になることを目指していきます。
私は今回のプロジェクトの経験を生かし、EBPMも含めたデータ利活用案件の獲得に向けた取組みを、AITや他組織とコラボレーションしながら進めていきたいと思っています。そのためには、まずは目の前の本プロジェクトに集中し、実績を出し、KPMGコンサルティングのファンを作ることが大切です。ファンになっていただいた方の「KPMGコンサルティングがすごく良かった」という口コミが広がることで、新しい案件につながっていくと考えています。
私も今回の仕組みをうまく活かし、他の行政機関に拡大展開していければというのが、直近で考えていることです。また、大量に眠っている文章から、抽象的なテーマ設定で関連するものを引っ張り上げるといった形でも、この技術を展開していけるのではないかと考えています。
キャリアとしては、KPMGコンサルティングには個人情報のプロもいれば、金融のプロもいるなど、本当に幅広い分野の専門家がいるので、そうしたメンバーの知見を吸収しながら総合的にキャリアアップを図っていきたいです。
※記事の記載内容は2024年12月時点のものとなります。