KPMGコンサルティングでは、組織におけるリーダーシップ開発に向け、グローバル共通のフレームワークを活用しながらさまざまな取組みを行っています。
今回は、リーダーシップ開発に関する投稿の第1回目「背景編」として、そもそもなぜリーダーシップが求められるのか、KPMGの考えるリーダーシップについてご紹介します。

 

■なぜリーダーシップが求められるのか

現代社会は、環境問題、格差、少子高齢化など多様な社会課題に直面しています。これらの課題は個別に存在するものではなく、環境問題による貧困の発生、ジェンダー不平等による教育格差の拡大など、相互に影響しながらますます複雑かつ複合的な様相を呈しています。また、企業を取り巻くビジネス環境は、急激な市場変動、地政学リスクに伴うサプライチェーンの混乱、技術革新と、かつてないほどの不確実性に満ちています。こうした状況に立ち向かうなかで、我々コンサルティングファームはどのようにクライアントに寄り添い、未来に向けた変革を促すことができるのでしょうか。その鍵を握るのは、「リーダーシップ」です。

 

皆さんの考えるリーダーシップとはどのようなものですか。リーダーシップ論の権威であるジョン・C・マクスウェル氏は、「リーダーシップとは影響力であり、それ以上でもそれ以下でもない」と述べています。この言葉からは、リーダーシップとは役職や権力に伴って生じるものではなく、お互いにポジティブな影響力を与え合うことがその本質であると理解することができます。重要なことは、社会の一員である我々一人ひとりが問題意識を持ち、果たせる役割を考え自分なりの影響力を発揮すること、そして、互いに良い影響を与え、受け取り合いながら、より良い選択に向けて協働していくことです。

 

コンサルティングファームにおいても、コンサルタントとして当然のことながら専門性や技術は必要ですが、それだけでは変革を生み出すことはできません。従来の成功モデルや既存の枠組みに基づく判断が通用せず、新たな組織体制や意思決定の必要に迫られている企業の姿を我々はこの数年間で数多く目の当たりにしてきました。不確実性の高い環境下で新たな機会を捉え、自組織、クライアント、ひいては社会全体の成長をリードする存在となるためには、人々を繋ぎ行動を促すリーダーシップの力が不可欠です。だからこそ、組織としてリーダーシップ開発に取り組む意義があり、私たちはここに大きな可能性があると考えています。

 

■KPMGのリーダーシップフレームワーク “Everyone a Leader”

KPMGでは “Everyone a Leader(EAL)”、つまり、職種や職階に関わらず正しいマインドがあれば誰にでもリードする力があるとの考えのもと、フレームワークに基づくリーダーシップ開発を行っています。このフレームワークは、外部の専門機関の研究を取り込むなど多額の投資によって開発されたものであり、世界のKPMGメンバーファームにおいて採用や人事考課にあたり活用されています。

 

フレームワークは、3つの原則にあたる”Deliver Impact(価値の提供)”、”Seek Growth(成長の追求)”、”Inspire trust(信頼の醸成)”を柱に、これら3原則を体現するために不可欠な特性を9つに細分化しており、「KPMGに所属する各員がリーダーシップを発揮するためにどのような行動を取ればよいのか」という行動様式を役職ごとに言語化しています。EALは、世界各国に所在する27,000人超のKPMGメンバーが、パーパス、バリューを体現しながらリーダーシップを発揮するためのグローバルでの共通言語として機能しているのです。

 

ちなみに、皆さんはKPMGがグローバルで掲げるパーパスやバリューをご存知ですか。自分の働く会社が何のために社会に存在し、どのような価値観を持っているのかを考えたことがあるでしょうか。パーパス、バリューの詳細はこちらのリンクから確認いただければと思いますが(Purpose and Values – KPMGジャパン)、どれほど崇高なパーパスやバリューを掲げたとしても、社員がそれらに納得感をもって理解できていなければ絵にかいた餅になってしまいます。EALのフレームワークは、KPMGの存在意義(Why)を示すパーパス、KPMGの重視する価値観(What we believe in)を示すバリューを日々の行動に反映させるために求められる行動を具体化したものとして、解像度のギャップを埋める役割を果たしているとも言えます。望ましい行動が明確に示されることで、自身の考え方や行動の内省・改善を行うことも容易になります。パーパス、バリューを役職に関わらず「実行できるレベル」にまで落とし込みフレームワーク化している点が、KPMGにおけるリーダーシップ開発の取組みの特徴です。

EALについてはこちらのページでも紹介しています:人材育成|KPMGコンサルティング 採用サイト

 

■KPMGコンサルティングの取組み

Everyone a Leaderの名称にも表れるとおり、リーダーシップの発揮が期待されるのはトップの役職者に限りません。組織のトップ層やハイパフォーマーのみがリーダーシップを発揮する組織に比べ、組織の各員がリーダーとしてのマインドを持ち主体的に行動する組織の方が、不確実な状況に柔軟かつ迅速に対応し、新たな価値を創造する力を有することは想像にたやすいのではないでしょうか。

 

KPMGコンサルティングでは、EALに基づく組織レベル・個人レベルでのリーダーシップ開発に向け、社内ワークショップや研修、グローバル×若手リーダーシップの強化を目的としたOne Young Worldサミット※への社員派遣等、さまざまな取組みを行っています。

特に今期焦点を当てているのは、社会課題の解決×リーダーシップをテーマとしたフィールドスタディの実施で、これまでに以下の研修を実施しています:

 

  • <ジェンダーギャップの是正・女性リーダーシップ開発>KPMG韓国との合同プログラムを開催
  • <福島第一原子力発電所事故/被災地復興>福島県の地元リーダーたちとの対話や被災地見学を伴う研修
  • <人口減少/地方過疎化>地方創生に取り組む岩手県紫波町での研修

 

実際に足を運び社会課題を体感すること、同じ課題に直面する人たちとの対話を通じた内省を行うことが、社会課題を自分事として再認識し影響力を発揮するための一歩を踏み出す契機となると考えています。「どのようなリーダーシップを発揮したいか?」という問いは、「どのように生きたいか?」という根源的な問いにもつながります。数多くの企業をクライアントとし、クライアントの先に社会の存在を見据えた支援を提供するコンサルティングファームであるからこそ、そこで働くことにご関心をお持ちの皆様には、自分なりのリーダーシップとは何か、それをどのように発揮できるのかをぜひ考えていただきたいと思います。

 

今回は、KPMGの考えるリーダーシップと取組みについて、EALフレームワークをもとにご紹介させていただきました。

次回以降の記事では、今回ご紹介したフィールドスタディの参加者から実際の研修の様子や学びについて生の声をご紹介します。

 

※One Young Worldサミット:世界的な課題の解決に向け、若手リーダーシップをサポートする世界最大級の国際プラットフォーム。ヤング・ダボス会議とも呼ばれる年1回のサミットには、190 カ国以上からの各国代表が集い、様々な国際課題に関してディスカッションやネットワーキングを行う。