I&Dの道のり、そして目指す未来

The future is inclusive

KPMGコンサルティング

KPMGコンサルティングでは、多様な個性を持つ一人ひとりが「高品質なサービスの提供により、クライアント・社会に貢献する」という目標に向かうための手段の一つとして、インクルージョン&ダイバーシティ(I&D)の推進に取り組んでいます。その意図や本質的な考え方、具体的な取り組みなどについて、経営トップを含む3人の推進役が語ります。

宮原 正弘

宮原 正弘

代表取締役社長 兼 CEO

旧・朝日新和会計社(現・有限責任 あずさ監査法人)入所後、会計監査、会計・内部統制アドバイザリー、ビジネスコンサルティング、ITコンサルティング業務等を担当。米国・ロサンゼルス事務所、ニューヨーク事務所への駐在を経た後、KPMGアカウンティングアドバイザリーサービス日本代表およびアジア太平洋地域代表に就任。2017年7月よりKPMGコンサルティング代表取締役社長兼COO、2018年7月より現職。

佐渡 誠

佐渡 誠

執行役員パートナー 経営企画・I&D担当
2014年入社

日系大手印刷会社にて広告営業等を経験した後、外資系戦略コンサルティングファームにて、戦略コンサルタントとして通信、消費財、家電、製造業等の企業に対して成長戦略・事業戦略、営業・マーケティング戦略等のコンサルティングサービスを提供。2014年、KPMGコンサルティングの設立時に入社。ビジネストランスフォーメーションユニットのパートナーとして経営マネジメント、業務変革コンサルティング等全般に携わる。

千田 尚子

千田 尚子

シニアマネジャー 製造セクター・I&D推進
2016年入社

大学で国際経済学を学び、大学院にて経営学修士号を取得。外資系製造業や外資系ソフトウェア企業数社を経てKPMGコンサルティング入社。シニアマネジャーとして、主にインダストリー4.0を中心とした製造業のデジタル変革支援に従事。また社内I&D推進担当として、多様性から企業成長へ結びつける活動を推進中。プライベートでは、中学生の母として多忙な毎日を送っている。

多様性を強みへと変えていくためのI&D

――なぜKPMGコンサルティングではインクルージョン&ダイバーシティ(以下I&D)の推進を重要な経営戦略の一つとして位置づけているのでしょうか。

宮原 KPMGコンサルティングは、2014年に約200名でスタートし、中途採用を中心に実に多様な人材が集まった結果、5年目となる現在では1000名を超える組織となっています。
出身業界はコンサルティング業界のみならず、情報システムベンダーや事業会社等多岐にわたっており、身につけてきた知見やスキル、経験も多種多様です。国籍やジェンダーはもちろんのこと、年齢も幅広い世代にわたっています。
ここから生み出される多様な価値こそが、当社のコンサルティングサービスの強みにつながっています。我々のクライアントは様々な業界に広がっており、それぞれを取り巻く経営課題も複雑かつ多岐にわたっています。そうした様々な課題に対応していける組織力を持ち、ソリューションを提供していくことができなければ、我々がクライアントから評価されることは難しい時代です。だからこそ、KPMGコンサルティングではI&Dを単なる人事施策・労務施策として捉えておらず、会社全体をサステナブルに発展させていく為の重要な経営課題として認識しているのです。

千田 まさに、当社の場合、改めてダイバーシティという言葉を口にしなくても、宮原さんが言った通り、既に自ずとダイバースな組織になっていると言えます。そのため今後取り組むべきは、その多様性を活かすための仕組みづくりです。それが“インクルージョン”という言葉を“ダイバーシティ”という言葉より前に置いている理由でもあります。

佐渡 しかし、そうした多様性は、反面、我々の弱みになりかねないリスクも内包しているわけです。つまり、様々な価値観を持つ人材が集まるが故に、組織内にハレーションやコンフリクトが起きるシーンも少なくはありません。

宮原 そうですね。人材のダイバーシティは、多様な価値を生み出すという点では大きな強みですし、そのポテンシャルは高いと捉えていますが、一方で歴史のある企業であるならば当然持っているはずの“あうんの呼吸”が生まれにくい、という側面もあるのは事実です。まさに、佐渡さんの言うハレーションやコンフリクトをきちんとマネージしていく必要があると認識しています。

佐渡 私も他のコンサルティングファームから転職してきましたが、同業界であってもファームによって企業文化や環境が異なるため、社内においてコンサルタント同士でも共通の言語を持たない場面や、相手の気持ちが理解できないというコンフリクトが少なからず生じています。ましてや他業界から転職してきた社員となれば、なおさらです。ただ、それは「多様性を活かす」というこれからの重要な経営課題に比べれば、さほど深刻な話とは個人的には捉えておらず、徐々に歴史が積みあがってくれば自然と解決していくものだと考えています。

千田 私は外資系ITベンダーの出身で、KPMGコンサルティングに入社して既に3年経ちますが、同じプロジェクトのメンバーでもバックグラウンドが異なるために、「それはどういうこと?」と理解できなかった経験もありますし「何故この内容の理解ができないのだろうか?」と考えることもあります。

宮原 経営メンバーが集まるパートナー会議でも同じです。皆が自由に意見を言い合うのは良いことですが、使っている言葉の意味が少しずつ違うから、議論していても次第に認識のズレが生じたりします。バックグラウンドが違うので、それも当然と言えば当然です。それでも、こうした個々のパートナーの多様な価値観や経験、ノウハウというものが議論の背後に存在していて、様々な角度から本質的な議論が繰り返されるメリットをもっと生み出して行きたいと思っています。

千田 同じ言葉でも業界によって意味が微妙に異なるのはよくあることですから、そうした違和感は当社では日常茶飯事でしょうね。それも多様性を活かそうとする会社が直面する入口での課題なのかも知れません。

宮原 私は「オーナーシップ」「リスペクト」「コラボレーション」という3つの言葉を大切にし、常に社員に向けて発信していますが、特に「リスペクト」の必要性を強調しています。優れたコンサルタント同士がオーナーシップを発揮し、コラボレーションして、クライアントに最大の価値を届けていくためには、立場の違いや個々のバックグラウンドを超えて互いの考え方や価値観をリスペクトし合わなければなりません。当社はダイバーシティな環境ながらも新しい企業で“あうんの呼吸”が無いからこそ、多様な価値観を活かしながら全員が一つの方向に進むこと、つまり「インクルージョン」がことのほか大切であり、互いの「リスペクト」の大切さを常に訴えていかなくてはならないと考えています。

価値を提供し、ブランドとプライドを高める

――I&D推進の具体的な取り組みはどのようなものでしょうか。

佐渡 「I&Dの推進=福利厚生制度の充実」と勘違いされがちです。確かに福利厚生制度と考えるとわかりやすいし、成果として見えやすいのかもしれませんが、しかし福利厚生制度の充実は、決して目的ではないし主役でもありません。

宮原 例えば「働き方改革」でも、勤労時間などの制度に目を奪われると、本質を見誤ってしまいます。「働き方改革」は、緩く働くことを目的としているのではなく、社員を甘やかす制度であってはなりません。その本質は一人ひとりの生産性を高め、バリューを高めることにあります。

千田 その視点は忘れてはならないですね。制度だけ充実させても、本業がおろそかになっては意味がありません。

佐渡 重要なのは、I&Dの推進によって多様性を大きな価値に変えて今まで以上の付加価値をクライアントに提供する、という思想です。この多様性を一つに束ねそれをビジネスに活かす、という本質を実現する事はやはり難しいわけです。

宮原 同質な人材を同じ方向に向かわせる方がずっと簡単ですが、ダイバーシティから生まれるコンフリクトをマネージし、時間や手間がかかっても、会社にとって、また、クライアントにとって、最適解を導くことが重要ですね。

佐渡 上の図は我々のI&D推進に際しての考え方をまとめたものです。ここではI&D推進を「個々の多様な力を結集し、クライアントへ価値を提供し、当社のブランドを高め、そして社員一人ひとりのプライドを高めていく活動」と定義しています。 まず、性別や国籍といった属性はもちろん、多様な価値観を持った人材が集まる組織であること(=ダイバーシティ)が前提となります。ここは、当社は既にダイバースな状態にあると言えるでしょう。
そして、考え方や価値観の違いを知りその違いを認め合いながらも、全員が同じ方向を目指すという、つまりI&D推進の目的の合意形成が、その起点となります。そのためには各種研修を充実させることはもちろん、様々なコミュニティを形成して対話していくような草の根運動が重要になるでしょう(1.マインド)。その上に個人のパフォーマンスが最大化されることを目指した教育や評価、福利厚生などの制度が整備されていきます(2.制度)。さらに様々な制度に下支えされた上で多彩な人材のスキルやノウハウが蓄積され、リスペクトを持って機動的に繋がり、誰もが最大化された能力を発揮できるようにする(3.スキル)。その結果として、クライアントに対して高い価値が提供できるようになるというわけです(4.提供価値)。このクライアントへの価値提供を最大化していく事こそが重要なポイントです。しかしさらにその先があります。高い価値を提供することで、クライアントはもちろん社会や家族からも評価を得て当社のブランドが高まり(5.KCブランド)、KCで働く事への充実感、そしてそれが社員一人ひとりのプライドにつながっていく(6.KCプライド)、ということが必要です。

千田 しかし、この図が示すI&D推進の基本的な考え方は、まだ全社員に浸透しているとは言えません。これから機会あるごとに発信していかなくてはならないと考えています。

宮原 今後も新しい人材の採用は積極的に進めていく方針ですから、私も何度でも話し続けるつもりです。

千田 I&D推進の起点である「1.マインド」の具体的な手段の一つとして、トレーニングや研修のメニューも開発中です。

宮原 アンコンシャスバイアス研修などは興味深いですね。例えば、賞賛のために思わず発した「女性なのにすごい!」という言葉の裏側には無意識に女性に対する偏見が潜んでいるというのはよくあることですから、そうした自身のアンコンシャスバイアスの存在を自覚し、相手の考え方や価値観の違いをリスペクトし、自らの言動を変えていくことは大切だと思います。

千田 また、I&D施策を実効性のあるものとし、その推進を加速するために、「I&Dコミッティ」もスタートしました。各サービスラインから多彩な人材が参加し、I&Dを考えるという取り組みです。コミッティでは若い社員の活発な意見交換にも期待したいですね。彼ら彼女らが所属部署に戻ってI&D推進のリエゾンとして機能してくれることも想定しています。

これから入社する人材が組織を変えていく

――今後、I&D推進を通じてどのような組織を目指していきますか。

宮原 I&Dを全社員が経営課題として認識し、各種施策に積極的に参加することによって、組織がさらに活性化し、笑顔が絶えず、仕事を楽しむ文化を創っていきたいですね。

佐渡 一方で、当社のI&Dの推進はまだ始まったばかりなので、「I&D推進」という言葉が先行して、期待しつつも“ではどうしたらいいのだろうか?”と様子見のところがあるのも否定できません。でも様子を見ているだけではダメなんです。多様な人材を活かし、価値提供の貴重な源泉として生き生きと働いてもらう環境を作り上げないと、我々のビジネスそのものが不安定な状態に陥ってしまう、そういう危機感を全マネジメントが自分事として意識してリードしていって欲しいと思っています。

宮原 コンサルティングファームは、変化の激しい環境下において新しい考え方やテクノロジーを取り入れ、企業の変革をリードしていく存在にならないといけません。その意味でも、これから入社される特に若い人たちにも、I&Dの推進、施策について、遠慮せずどんどん意見発信をすることを期待しています。

佐渡 逆に我々のような世代こそ、大幅なマインドシフトが必要かもしれませんね。

千田 組織面では、まず女性の活躍推進を目指したいと思います。現在、女性社員の比率は28%(2019年4月現在)ですが、これを2022年までに30%に高めたいというのが当面のKPIです。あわせて女性管理職比率の設定も大きなテーマです。

宮原 確かにその点は早急に取り組みたいですね。現在当社には経営陣であるパートナーが40人ほどいますが、女性は1人だけで、また外国籍のパートナーもごくわずかです。一方、世界に目を向けると、KPMG米国やKPMG台湾のトップは女性です。KPMGには女性が活躍できる土壌はあると確信しています。

千田 もちろん私たち女性社員自身も、努力しチャレンジすることは必要です。女性の活躍推進は、決して単なる女性の権利主張ではありません。しかし一方で、若い世代は強い上昇志向を持っているようにも感じているので、その点では非常に期待をしています。また、コンサルタントを志望する他業界の女性が応募しやすい仕組みもつくっていきたいですね。

宮原 I&D推進は単なる制度ではなく、非常にコンセプチュアルな取り組みですから、どうしても“どういうこと?”という反応になりがちです。全社員が腹落ちするのに時間がかかるのは確かでしょう。しかし、変わらなければならないという危機感は全員が持っていますから、必ず自分ごととして取り組んでくれると思いますし、これから入社される方にもその力になっていただきたいと思います。

佐渡 如何にI&Dを推進していくかという問題は、あらゆる日本企業が直面している問題だと思います。我々は他の企業に先んじて、より強固にI&Dという経営課題に取り組み、5年後10年後の未来をもっと明るいものにしていきたいと考えています。知恵を結集してこのテーマに取り組むことで、先進的なコンサルティングファームになっていきたいですね。