Business Innovation  宇宙ビジネスチーム

アソシエイトパートナー 宮原 進

求められるのはプロジェクトの「推進力」

「宇宙産業」という言葉は半世紀以上前 、国が主導で宇宙産業や宇宙開発を推進し、アメリカがアポロ計画を進めていた頃からありました。それが2 000 年を過ぎたあたりから民間プレイヤーの参入が増え、欧米を中心にスタートアップも多く見られるようになり、産業構造が大きく変わり「宇宙ビジネス」へと変化しました。2010年頃から日本でもこうした動きが増えるなかで業界の課題感も変化し、私たちのようなコンサルテーションに対するニーズが生まれてきたのがここ5 年の傾向です。宇宙ビジネスは多様な領域、多様な業界と関わるため、 KPMGコンサルティングとしても組織全体が連携して課題にアプローチしなければならない、さらにそれによって市場のなかで私たちが支援できる機会も増えるだろうということで、 2022年に正式にチームとして組成しました。この宇宙ビジネスという領域においては、転換期ゆえに取り組んでいる企業にとって足りないパーツが多く存在します。私たちに求められるのは足りないパーツの補完です。宇宙ビジネス支援というと当該領域の専門性のみが求められると思われがちですが、実際は事業を強力に推し進めるための「推進力」が必要となります。そのため、宇宙領域に関する「専門性」と論理性を持って物事を進める「推進力」の両輪を支援できるチームメンバーで臨まなければなりません。

 

「宇宙ビジネスならKPMG」という地位を確立する

宇宙領域はビジネス環境が特殊で、どの方面にビジネスを進めるにしても前例のない挑戦となることが多いです。そのため、問題が山積しやすく、一歩一歩足が止まってしまう領域です。さらに、今後ますます国際競争が激しくなっていくことが予想され、欧米の先進的なサービスが日本にも押し寄せるなかで、日本のプレイヤーは常に海外を意識して戦っていかなくてはなりません。一方で、宇宙ビジネスは価値の生み出し方が未知数なものが多い。サービスを作ったは良いが、顧客が見当たらないというケースが散見されます。このような状況において、私たちはプロジェクトを進めるうえでの問題やリスクを予見し、何をすべきか、問題をどう乗り越えていくのかを的確に指し示し、力強く推進していく必要があります。将来、市場における宇宙技術の利用方法が拡大し、社会実装が進むことで、ビジネスの裾野も拡がり、新たな価値、新たなサービスを生み出せるチャンスも増えてくるでしょう。宇宙ビジネスにおける全方位的な挑戦を支え、課題をクリアしていくために、個人としてもチームとしてもプレゼンスをさらに高め、「宇宙ビジネスなら KPMG」としてクライアントから信頼いただけるポジションを確立していきたいと考えています。

 


 

シニアコンサルタント 吉川 和宏

グローバルネットワークを活用し、ニーズの先に応える

宇宙ビジネスの難しさとして、領域の性質上、国の枠組みを超えたグローバルな視点が必要であること、そして成熟産業と比較して情報収集が困難であることが挙げられます。最前線のプレイヤーたちが、それぞれの特徴や強みを活かし、それぞれの方向へ走っているなかで、どの企業の技術やサービスがどのように優れているのか、それはなぜなのか、を図る明確な水準がないからです。情報があまり表に出ないスタートアップも各国で増加し、業界の現在地や全体像が見えづらく未知数な部分が多いなか、クライアントの期待に応えるにあたっての私たちの強みは、やはり KPMGのグローバルネットワークです。宇宙業界に詳しいメンバーや、業界における多方面とのリレーションを活かし、そのなかでヒントを得て、ピースを組み合わせて仮説を立てながら、一歩一歩進めていく。こうしたグローバルネットワークの活用により、クライアントからの依頼にただ応えるだけではなく、ニーズのさらに先を見据え、クライアントが今後どういったビジネスを考えているのか、そして次の一歩を踏み出すためにどう支援すべきかを常に意識するよう心がけています。

 

「宇宙村」を抜け出し、ビジネスの裾野を拡大していく

宇宙という未知の領域に、これまで宇宙と関係がなかったプレイヤーが足を踏み入れるケースも少なくありません。宇宙産業のさらなる成長が期待されるなか、既存のプレイヤーだけでなく、異なる業界から新たなプレイヤーが積極的に参入してくることは、私たちとしても歓迎です。私は以前JA XAで研究開発を行っていた経験がありますが、この約 10 年で国内外問わず宇宙ビジネスを取り巻く環境が目まぐるしく変わり、民間プレイヤーも増えてきているなか、これまで研究開発してきた技術的な知見を宇宙ビジネスの発展にもっと活かしたいと思うようになりました。その答えが、技術的なバックグラウンドを活かしたコンサルテーションで、宇宙ビジネスに挑戦する人々を支えることでした。「宇宙村」という言葉がありますが、今ようやく私たちはそうした閉じた世界から抜け出そうとしています。どうすれば地球上の生活がより豊かで便利になるのか、宇宙領域の技術と潜在的な市場ニーズを紐づけ、ビジネスの裾野を拡大していくプレイヤーが必要です。そうした役割を果たせるようチームとして目指していきたいと考えています。

 


 

シニアコンサルタント 溝江 桃

 

課題を発見し、解決のための潤滑剤として柔軟に支援する

ディープテックと呼ばれる領域のひとつでもある宇宙の最先端テクノロジーやそのサービスは、技術として秀でてさえいれば売れると思われるかもしれません。その考え方も間違いではありませんが、一方で、市場調査をしてきちんと売れるビジネスモデルをつくること、関係者へアピールし理解してもらうこと等、地道な活動も欠かせません。また、宇宙業界はステークホルダーが非常に多く、1社では対応できない場合に適切なパートナーシップを組むといった技術開発以外の工程も重要です。スタートアップのような資金面も人材面も不足している場合は殊更です。こうした足りない部分を補うため、問題を特定し、解決の潤滑剤となれるよう柔軟に支援を行うことで、日本の宇宙ビジネス発展の一助になることができるというのが最大のやりがいです。宇宙ビジネスは、内需完結型のビジネスモデルでは成立しづらいため、最初からグローバルな視野を持って世界中のプレイヤーと競争しなければならない産業であり、クライアントが抱える課題も実に多様です。そうした多様化・高度化するニーズに応えられるよう専門性をさらに高めることはもちろんですが、クライアント当事者では気づかないようなコンサルタントとしての客観的な視点から得られる気づきを提供することが私たちの役割であると考えています。

 

宇宙技術と潜在ニーズとのコラボレーションを創出

宇宙はあくまでアセットであり、宇宙領域の技術だけではビジネスは回りません。その技術を活用するエンドユーザーを想定し、潜在的なニーズを掬い上げながら新たなビジネスにつながるコラボレーションを創出していくことが重要です。宇宙業界が進展していくほど、ニーズ側とのコラボレーションも際限なく拡がっていくところが宇宙ビジネスの面白さであるとも言えます。こうした新たなコラボレーションの可能性を、私たちも見つけていかなくてはなりません。今はまだ宇宙にどうやって行くか、人工衛星をどうやってつくるか、インフラとしての取組みが先行していますが、そのインフラを使ってどのような便益を地上社会の人々に還元していくか、そこが産業の成熟にとって大切です。KPMG コンサルティングにはスマートシティやサステナビリティを専門とするチームがありますが、そのような、今後宇宙領域とコラボレーションの可能性がある多様な領域と横断的に連携しながら、一丸となって取り組めることが私たちの強みです。規制や防衛面など乗り越えるべき課題はたくさんありますが、自動車産業や電機産業のように、将来の日本経済を支える産業の 1 つとして、宇宙産業のさらなる成長に貢献できるチームを目指したいと思います。