<インタビューイー>
- テクノロジー・メディア・通信、消費財・小売・サービスセクター統轄パートナー
山根 慶太
- テクノロジーセクター アソシエイトパートナー
和田 智
- メディアセクター アソシエイトパートナー
山田 宏樹
- 通信セクター アソシエイトパートナー
石原 剛
- 消費財・小売・ サービスセクター アソシエイトパートナー
今西 仁美
- 消費財・小売・ サービスセクター アソシエイトパートナー
松本 友之
- 商社セクター パートナー
大谷 誠
業界の仕組みやサービスの提供形態も大きく変化
通信分野では、AIが起爆剤となり、ネットワークアーキテクチャとビジネスモデルの変革が起こるでしょう。A Iがネットワークを動的に自律制御し、ネットワークアーキテクチャは中央集権型から自律分散協調型へ変わる。複数の通信事業者間でネットワーク設備を共用するインフラシェアリングが進み、ビジネスモデルも垂直統合型から水平分業型へ、インフラを集約するアグリゲータのような新しい事業者が出現するでしょう。その結果、ネットワークが毛細血管のように広がって街や暮らしに溶け込み、ストレスフリー・リスクフリーな社会が実現すると予想できます。
テクノロジー分野では、製品やサービスの提供形態が変化するでしょう。特に通信サービスとの融合が進み、売り切りモデルから XaaS(X as a Service:クラウドによるサービス提供)化が当たり前に。事業者側でも収益獲得タイミングの変化に応じたビジネスモデル・ビジネスケースの策定や、顧客リテンション維持のための保守・サービス部門の強化、顧客データの収集・分析、その結果をサービス向上や新サービスに活かすサイクルの確立や運用を図る必要性が考えられます。また、クラウド型ビジネスを支えるデータセンターのビジネスモデルも大きく変わるでしょう。1つは A I データセンターの普及拡大。データ処理量が飛躍的に増大し、さらなる利便性向上が期待される一方、カーボンニュートラルとの整合をとった処理および冷却用の電力調達が課題となるでしょう。もう1 つは、エッジ型データセンター等の分散型モデルの普及拡大。現在は巨大なハイパースケールデータセンターによる集中型モデルが主流ですが、今後自動運転や遠隔医療などが普及すると、レイテンシーの問題からエッジ型データセンターも増加すると思われ、そのインフラ整備が進めば、地方への展開と活性化への期待も持てます。
社会の環境変化に合わせた事業変革力強化が企業課題
メディア業界では、各企業が試行している生成 AI を含めた技術精度の向上、および著作権関係のルール化に伴い、コンテンツ制作におけるAI活用が間違いなく進みます。これにより、個人や小規模組織でも高品質かつ効率的なコンテンツ制作が可能となります。また、グローバルコンテンツ市場やグローバル O T T 事業者の拡大等により、国内のみに閉じた事業は縮小を迫られ、事業者の淘汰が進むでしょう。収益の源泉である優良I P(知的財産 )の囲い込みを目的としたM& A や、事業統合が進むことも予想されます。
消費財・小売業界 では、少子高齢化と地域格差の拡大が更に大きな課題となっています。とくに物流に関しては深刻です。共同配送は進化し、その地域にしかない小さな業者や個人との提携配送が進んでいきます。また、過疎地域の自治体や企業と連携したリアル店舗の出店は、防犯や高齢者の見守り、ラストワンマイルのタッチポイントとして、ますますその需要は大きくなるでしょう。また、労働人口が減り、働き方の多様化が進む日本社会では兼業や副業が増え、スキマワーク・バイトと呼ばれる働き方も一般的になるでしょう。企業側は、働く環境の整備がより重要になります。人材サービス業でも、人生100 年時代に向けた学び直しやマネープランなど、キャリア支援とワンパッケージで進めていく流れになると予想します。総合商社では、貿易から投資ビジネスへという事業スタイルの変化が加速します。有望な企業群を見いだし、経営に深く関与して変革を進め、他事業とのシナジーからバリューアップを図ることで、収益性•成長性というマーケットの期待に応える。オープンでストーリー性のある事業展開を目指す動きが強まっていくと考えられます。