インタビューイー(写真左から)
KPMGコンサルティング株式会社
ポーツビジネスチーム
スペシャリスト 井川 宜之
マネジャー 越山 順史
アソシエイトパートナー 笹木 亮佑
株式会社湘南ベルマーレ
代表取締役社長 坂本 紘司氏
営業本部 第2営業部 片瀬 雄介氏
to C 事業部部長 日下部 諒氏
※記事の記載内容は2024年7月時点のものとなります。
Key Factors for Success ~本プロジェクトを成功に導いた鍵となるポイント
- 多くの人が非日常の空間(スタジアム)での観戦体験を得るための個人に寄り添う集客戦略とCRMアーキテクチャ
- スポーツの力を活用した企業サステナビリティ活動の道標と実弾としての共創デジタルプラットフォーム
- 「やって終わり」ではない、具体数字を活用したインパクト評価を通したサステナブルなサステナビリティ経営推進態勢
ファン一人ひとりを把握し、AIを活用して来場につなげる
2023 年 9 月24日、湘南ベルマーレは、国立競技場で開催された対川崎フロンターレ戦で 5 万4243 人を動員し、クラブ史上最多の来場者記録を更新する。それは、デジタルイノベーションパートーナーとして、クラブのデジタルマーケティングを変革・支援してきた KPMGコンサルティングにとっても、ひとつの大きな成果が出た日になった。試合がある日だけでなく、ファンが 2 4 時間 365 日いつでもチームとつながることができれば、集客にもつながる。ファンとのより強い関係性の構築をめざし、2020 年よりKPMG コンサルティングは湘南ベルマーレのファンエンゲージメントの支援に着手する。「J リーグやファンクラブ、EC ショップなどシステムごとに保有しているファンのデータを一元管理できておらず、ファンの実態を捉えられていなかった」と、当時の課題について坂本氏は振り返る。
そこで、まずKPMGコンサルティングが取り組んだのは、ファンデータを統合して一元管理し、スタジアム来場履歴やグッズの購買履歴など一人ひとりのファンを把握できるように整備すること。スタジアムでのキャッシュレスの導入も推進し、デジタルマーケティングの精度を高めていった。次にこの蓄積したデータを基に、A Iを活用して個々のファンの来場予測を立てて戦略的かつ緻密な施策を構築。対川崎フロンターレ戦では「集客の最大化と収益の最大化をともに実現する」というミッションを掲げ、通常では考えられないくらいの数多くの来場者促進施策を用意し、その達成に挑んだ。現場で指揮をとった日下部氏は、「KPMGコンサルティングの皆さんは、試合までのほぼ毎日、チケットの販売状況を見て、どのタイミングでどんな施策を打つか、クラブ目線で一緒に粘り強く考え抜いてくれた。その結果、来場者数も売り上げも目標を上回る成果を達成できた。影の功労者である絶大なサポーターに拍手を送りたい。試合当日、人で埋めつくされたスタジアムの光景を見た時は感慨深かった」と語った。大観衆のスタジアムは、ファンの満足度にもつながる。理想は 、10 0 人いれば100 通り、1 万人いれば 1 万通り、個人に最適な施策を打つこと。真摯にかつ愚直に、デジタルイノベーションパートナーとして、KPMG コンサルティングの伴走は今後も続いていく。
パートナー企業を巻き込み、SDGsに参画できる場を提案
湘南ベルマーレは、パートナー企業だけで約 650 社を超えるクラブ。また、SDGsという言葉が世に出るずっと前から、小学校の体育授業やスポーツ教室など、ホームタウンである湘南地域を中心に社会貢献性の高い活動を行ってきた経緯がある。こうしたクラブのカラーに着目し、KPMG コンサルティングが新たに提案したのが、地域共創型デジタルプラットフォーム「SDGs engine」だった。パートナー企業はもとより、ホームタウンの自治体やファンなどさまざまなステークホルダーが連携し、デジタルを活用してSDG s活動を展開する先進的な仕組みだ。
坂本氏は「多くのパートナー企業に支援していただいていること、公益性の高さが私たちのクラブの価値であることを再認識させてもらった。また、サスティナビリティを経営理念に掲げるものの、具体的なアクションに迷っているパートナー企業も多かった。この提案を受けた時、私たちのクラブがハブとなって、パートナー企業同士が知恵を出し合えば、湘南エリアをもっとよくできると考えた」と語る。片瀬氏も「これまで地域社会に貢献する活動を行ってきたが、クラブ単独の力やパートナー企業 1社との連携による従来のアプローチでは、人的にも資金的にも限界を感じることがあった。自分たちのクラブだけではできないことも、KPMG コンサルティングのサポートのもと、いろんなパートナー企業を巻き込んでいけば、もっとインパクトのあることができるのではないかと大きな可能性を感じた」と振り返る。一方で、企業がプロサッカークラブと共創して社会課題を解決する、この概 念や仕組みは、日本のスポーツ界でほぼ前例のない取組み。パートナー企業の理解を得ることは決して容易ではなかった。そこで、立上げ当初は企業からの費用は度外視し、具体的なモデルケースを多数展開し、この仕組みのメリットを実感してもらえるように取り組んだ。たとえば、湘南エリアは海と緑豊かな自然が地域の宝物。あるハウスメーカーが「SDGs engine」で、SDGs 目標15 の「陸の豊かさも守ろう」をゴールにした植樹体験の開催を提案すると、それに賛同する企業が参画・協働して実現していく。
他にも、SDGs 目標4「質の高い教育をみんなに」をゴールに学生向けに「スポーツの価値と可能性を見つける座談会」などを続々と開催していく。その結果、企業が連携して SDGs にアクションを起こす取組みはメディアで取り上げられる機会も多く、パートナー企業からも一定の評価を得ることができた。さらに、2024 年度のリニューアルでは企業同士がチャットで会話することも可能になり、社会の課題解決を効率的に具体化する有効なツールとして「SDGs engine」をますます進化させている。
湘南エリアを元気にするため、これからも泥臭く伴走していく
「SDGs engine」は、実施して終わりではない。定量評価に基づく社会価値算定レポートの作成・提供により、近年あらゆる企業に求められる非財務情報の開示にも役立てることができるのが特色だ。同時に、片瀬氏は、ユニフォームやスタジアムの広告契約などに依存していた従来型の収益構造の転換点にもなったと言う。「地域社会に貢献する活動は、決してボランティア(無償)ではないということ。きちんと価値として販売して収益源にしていくということをKP MGコンサルティングに教えてもらった。これは、スポーツの価値を向上させるという点でも大切なことだと思っている。多くの企業に参画してもらい、新たな事業収益の柱となるよう、取り組んでいきたい」と語った。
坂本氏も「『SDGs engineは、すでに私たちクラブにとってなくてはならないものになっている。今後は湘南地域の困りごとに打開策を見出す『課題解決カンパニー』となっていきたい」と述べる。これからもKPMG コンサルティングは、そのゴール達成のために泥臭く伴走していく。試合のない日も含めた365日で、スポーツを活用し、どのような価値を生み出していけるのか。空間を超えて、人と人、企業と企業をつなぐデジタルを武器に、そして、このプロジェクトを糧に、スポーツの価値をさらに高めていきたいと考えている。
湘南エリアはもちろん、日本全国へ活動を拡げ、サッカー界のみならずさまざまなスポーツ産業の成長を後押ししていく。