アゼルバイジャンにて、国連気候変動枠組条約第29回締約国会議(COP29)が11月11日から21日にわたり開催されました。

地球温暖化を背景とした気候変動への対策が人類喫緊の課題となる中、世界約200か国から政府、企業、研究機関、環境団体が集まり気候変動対策が協議されたこのCOPの会期中、KPMGはグローバルで協働し、現地でさまざまな活動を行いました。KPMGコンサルティングからもClimate Change & Decarbonizationの麻生パートナー、シニアマネジャー、シニアコンサルタントの3名が参加し、社内に向けて現地の様子をタイムリーにレポートしてくれました!

 

今回の記事では、3名のレポートの一部をお届けします。

 

国際舞台での登壇
「炭素集約型産業のグリーントランジションの資金調達」に関するパネルディスカッションにClimate Change & Decarbonizationのシニアコンサルタントが登壇し、日本企業のサプライチェーンエンゲージメント戦略やスコープ3への取組み及びデータマネジメントの課題について説明しました。急遽スピーカーとして招待され、5分もない準備時間の中で緊張しながらの登壇でしたが、COPという国際舞台でKPMGジャパンを代表して話すのは大変貴重な経験でした。

 

若手のリーダーシップ
KPMGインターナショナルの取組みとして若手がCOPに派遣され、各国のKPMGファームから若手メンバーが集まりました。若手メンバーで議論するユースイベントでは、形式的に若手を取り込むだけで、実際には声を上げるチャンスが与えられない「Youth Washing」がテーマに取り上げられました。真の若手参加を実現するためには、若い世代が主体的に意見を発信できるプラットフォームの整備が必要です。英国では、青年議会である「Youth Parliament」が政府に政策案の提出を行っていますが、他国でも「Youth Negotiation Program」の導入が必要であると議論されました。

イベント後は、他国のKPMGメンバーと交流を深め、次回のCOP30ではKPMG Leaders 2050(ESG推進のためのKPMGインターナショナルの若手ネットワーク)でアジアの若手の熱意を世界に発信するイベントの企画に取り組んでいこうと話し合いました。

 

ステークホルダーを巻き込むフェーズへ
現地で行われる企業主催のさまざまなイベントに参加し、気候変動やサステナビリティの取組みが、企業のみの活動から、広範にステークホルダーを巻き込み、実インパクトを社会に与えるフェーズに移行している事を感じました。例えば英国サッカークラブは、いかにサステナビリティ報告書をファンに読んでもらいエンゲージメントを高めるかに腐心し、食糧システムの企業は、温室効果ガス排出量の20%を占める地域の農家を巻き込んだ変革に課題を感じており、各団体とも、現場レベルの人をどう気候変動活動に巻き込むかを一番強調していました。このような議論には、必ずデジタルプラットフォーム導入を通じたデータ可視化、多様なステークホルダーの統一的管理、KPIモニタリングなどがセットで語られ、まさに社会をトランスフォーメーションさせていく動きの必要性も感じました。

 

技術革新ドリブンな日本
フードシステムについての課題は、2050年に100億人に達する人口に対する食糧確保と、気候変動への対応を同時に実現する事です。海外では、データマネジメント高度化や、地方政府を巻き込んだ農家の方々とのコミュニケーション、インセンティブ提供のための補助金などのアプローチが紹介されているのに対し、日本からの参加企業からは、技術ドリブンなアプローチが紹介されていました。イベントの最後に発せられた「イノベーション(技術)は既に存在している。大事なのは、正しい場所・人に正しく導入し社会実装させること」というメッセージは印象的で、強く共感しました。社会を変えるドライバーとなる技術などを見つけ、実装・仕組み構築を通じた社会変革が重要だと感じます。

 

COP29に参加して

サステナビリティ情報の開示について、現地でお会いした日本企業の方から「社会の流れに合わせてサステナビリティ情報を開示してきたが、自社の開示内容は他社と一見変わりがなく、形式的な内容となっており、本質的な開示になっていない」という課題をお話いただきました。規制などに対する真面目さは日本企業の良いところですが、COP29のイベントで紹介されていた、読み手の目線を重視し、いかにサステナビリティ報告書をステークホルダーに読んでもらえるかに注力して、目的思考で柔軟な取組みを行っている欧米企業・団体の取組姿勢には学ぶところが多いと感じました。

また、日本では気候変動への「適応」に対する認知度が低く、気候変動への対応策についてコストとして捉えられることが多いと感じますが、欧米諸国のように、適応を単なるコストではなく、新たな事業機会として捉える文化を醸成することが重要だと感じました。COP29への参加を通じ、普段自分が関わるテーマのスケール感や社会課題について、各国の多様な取組みや視点に触れ、多くの学びを得ました。

気候変動対応を進めるには、先進的技術の社会実装により、ステークホルダーを巻き込み、社会変革を起こす必要があります。物事を横断的に捉える力や現場レベルの人たちを動かす実行力、あらゆるプレーヤーを巻き込むコラボレーションが重要であると感じました。KPMGの知見を活かし、日本の気候変動対策や持続可能な社会の実現に貢献していく必要があると改めて感じました。

 

 

以上、いかがでしたでしょうか?

今後は、現地参加メンバーを中心に社内外に向けたセミナーや勉強会の開催も予定しています。

 

KPMGコンサルティングには、グローバルプロジェクトの他にも、COPのような国際会議への参加、海外短期研修など、グローバルな環境でチャレンジする機会はさまざまあります。

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